花火特集2016

待ちに待った花火シーズン到来!でも、今年は去年と違う視点で花火を深く楽しみたい。

そんなあなたにお届けする、花火がもっと好きになる特別企画!


国際花火シンポジウム開催 緊急特集

「伝説の四日間」

本文:小西亨一郎/構成:小柳はじめ

 

日本のHA・NA・BI と 世界のFireWorks

第16回国際花火シンポジウム(通称:花火サミット)が、花火の街、大曲(大仙市)で開催。

“花火ツアーの元祖ハミング”は、140名のお客様と共に最終夜に大型バス3台で「世紀の花火イベント」に駆けつけました。

興奮冷めやまない「大曲の花火 春の章」に際して、ハミングツアー社長の小柳と、年がら年中、花火談義で盛り上がる20年来の友人、花火研究家の小西亨一郎氏に緊急寄稿して戴きました。

 花火の街大曲(大仙市)で四月二十四日から二十九日まで開催された「第十六回国際花火シンポジウム」が成功裏に終わった。世界三十七か国から過去最高の四一七人の花火関係者が集結した国際会議は、内容が濃く、充実していた。中でも連日打ち上げられた「大曲の花火 春の章 世界の花火 日本の花火」は、語り継がれる「伝説の四日間」となった。それは、一流の花火師の演出によって、極めて質の高い花火ショーになったからだ。

 僕は、コミュニティ局「FMはなび」が会場に設定したブースで、四日間とも生中継で花火解説をしたが、あまりの芸術性の高さに絶叫し、冷静さを失うほどの内容だったからだ。それは、今までの「大曲の花火」ではできなかった演出だったからだ。打ち上げ方や玉の号数(大きさ)の制限はなく、内閣総理大臣賞受賞の花火師八名が、「日本の花火」というプログラム(八分間)にそれぞれ挑んだ。八人の個性が鮮明に浮かび上がり、日本の繊細で緻密な花火が、音楽に合わせ夜空に描かれた。日本の花火の特徴であるシンプルな和火やその先の変化。さらには、星に細工をした変化星や時間差など、日本人にしかできない“究極の手仕事”ともいうべき花火芸術のオンパレードだった。大玉の十号玉(尺玉)まで使用し、最高難度の多重芯割物(四重芯や五重芯)を披露し、花火ファンをくぎ付けにする圧巻の八分間だった。海外の「FIREWORKS」とは明らかに異なる威風堂々たる演出だった。そこには、間と余韻があり、世界に日本の「HANABI」の存在を知らしめたといえよう。

もちろん、海外の花火も素晴らしかった。音楽とのシンクロした演出は抜群で、物量とともに迫力は十分。だが、デジタライズで余韻や残心を感じられず、HANABIが上回ったと感じたのは、僕だけではあるまい。海外からの参加者から「日本のすごいHANABIを堪能できた」「また大曲に来たい」といった声が多く聞かれた。地元を挙げておもてなしの心で接したことも、参加者の心に届いたと思う。

 世界に向けた「大曲の花火」の発信とインバウンド(外国からの観光客)事業を推進していく下地と自信ができたものと思う。

 今回は、イケブンを除く八社の内閣総理大臣賞受賞花火師が作品を打ち上げた。いずれも、その会社ならではの個性あふれる総合演出だった。今回は、時間が八分。この時間は大曲の名物「大会提供花火」よりも長く、大曲の創造花火(二分三十秒)の約三倍強である。また、打ち上げ手段は自由とした。つまり、大曲の花火の創造花火では、禁止されている斜め打ちや横打ちもOKとしたことで、多様な演出が可能となり、スリリングな演出や幅を利用した展開もできた。さらに、花火玉の大きさは、制限なしとしたことにより、通常のスターマインや創造花火では、五号玉までであったが、十号(尺)玉まで可能となり、奥行きと高さある壮大な演出ができた。そのため各社が究極の多重芯に挑戦したり、大玉使用によって、バリエーションに富んだ構成となった。だから、各社の独自性や演出力が十分に堪能できたHANABIショーとなった。

 僕も、これほど興奮し、素晴らしい花火を見せていただいた。今回開催した国際花火シンポジウムは、日本の花火の地位を確認できるともに誇るべき「芸術文化」であることを再確認できた。「伝説の四日間」の証人として、語り継いでいきたい。

「日本の花火は、進化し、深化しつづける」と。


国際花火シンポジウム(花火サミット)につい

世界トップレベルの花火製造&打上業者をはじめ、主催者や関係自治体などの花火関係者が一堂に会し、研究成果の発表や商談が行われる国際会議です。1992年にカナダのモントリオールで初めて開催され、世界各地で概ね2年に一度のペースで開催されています。前回2年前のフランスボルドーで大曲での開催が決定し、開催地のバトンが渡されました。

 

【小西亨一郎】

テレビや雑誌の花火解説などでもお馴染みの花火評論家であり国内随一の花火研究家。大曲花火倶楽部副会長として花火鑑賞士制度の起ち上げを主導。有名花火師からの信頼も厚く、名物花火をプロデュースした実績も数多い。

大曲の老舗酒販店で社長職を務めながら、日本ソムリエ協会秋田地区長、オーストリーワイン大使とし家業やワイン業界でも大活躍中です。



白眉だった内閣総理大臣賞受賞作家の8作品

今回の国際花火シンポジウムでは、「大曲の花火 春の章 世界の花火 日本の花火」として、日本の頂点を極めた花火師による、8分間に及ぶワイドスターマインの特別プログラムが打ち上げられました。

 

◆4/25 世界に咲かせよう  日本の花(山梨県 山内煙火店)

第一部と第二部にわけた構成。第一部は、「これぞ、究極の和火の世界」を演出。実に繊細な和火。すべてのトラまで和火を使用し、幽玄な世界を演出する。見事なまでの和火色とその先の変化は光輝星を使用し、和火の多様なるバリエーションを展開。後半は、雅の世界。錦(金色)を多用し、華やかな日本文化を花火で演出。この作品を完成させるため、トラ用の筒を新たに購入したという気合の入り方。和火トラの点火数の多さやクロスオーバーさせる緻密な計算。山内煙火店の個性を見せてくれた素晴らしい花火に初日から絶句でした。

 

◆4/25 『大地国形』、幻想物語(秋田県 小松煙火工業)

初日のフィナーレを飾ったのは、地元小松煙火工業。地元開催の意気込みと気合と責任まで感ずる演出だった。小松煙火工業の世界をすべて出し切った内容だった。得意の吊り物技術を駆使し、ランタンや残光から始まり、時間差や茜空(八方咲系花火)といった小松ならではの展開。圧巻は、前半と後半に尺玉で「三重芯」「四重芯」「五重芯」の連続打上げ。それが、完璧に決まり、「平成割物の帝王」小松の名を、強くアピールする贅沢な演出だった。玉の大きさの制限なし、打ち上げ方も自由という「日本の花火」は、無限の演出の可能性を魅せてくれた。初日からテンションがマックスだった。

 

◆4/27 ボレロ(愛知県 磯谷煙火店)

”旋律とリズムの反復“、”音色と音量の変化“が印象的なバレエ音楽「ボレロ」。その音楽との「調和」をテーマに磯谷煙火店ならではの演出で魅せた作品となった。まさに、磯谷煙火店の技オンパレードとなった。「ミルククラウン」から始まり「睡蓮」「万華鏡」「ミラーボール」「コスモ」「スノークリスタル」「ダイヤノユビワ」などなど磯谷煙火店が世の中に送り込んできたブランド花火の数々をひとつずつ二か所、三か所打上げを行い、しっかりと見せてくれた。磯谷の花火を知る多くのファンにとっては、たまらない演出となった。

 

◆4/27 美しき日本の花火(茨城県 野村花火工業)

これぞ、タイトル通りの「美しき日本の花火」を堪能できた八分間だった。日本二大花火競技大会である大曲と土浦で最高賞である内閣総理大臣賞の最多受賞を誇る野村花火の真骨頂だった。前半は、いきなりの五重芯で唖然とさせ、精巧な三重芯や「光の花束」といった八方咲系花火で、野村花火工業の高度な技術を披露。後半は、「幻想イルミネーション」や回転時間差やらせん状往復変化や星の変化を駆使した最新の花火を連発し、野村花火工業のすごさを印象付けた。

 

◆4/28 美への道筋(群馬県 菊屋小幡花火店)

菊屋小幡花火店の「美」の世界を堪能できた夢の八分間だった。小幡の「花火の美学」を知る最高の機会となった。今回の作品のキーワードは、「モノクロームと色彩」だった。繊細な和火からのその先の光星や輝きといった変化を、小幡流にじっくりと見せてくれた。「モノクローム」一色で多重に見せる技や精巧さは、小幡にかなうものはいない。そして、小幡まで初の「五重芯」を披露。もう、驚愕の日本の花火だ。

 

◆4/28 アラビアンナイト~愛と魔法の物語~(秋田県 北日本花火興業)

こういう夢のあるテーマ設定は、「花火界の型物の帝王」「花火界のエンターティナー」の異名を持つ北日本花火興業ならではだ。設定が、砂漠に囲まれた神秘と魅惑の都。魔法のランプをこすると、そこに不思議な光の造形が現れ、「自由」と「未来」を与えてくれるというストーリー。まさに「花火のエンターティナーショー」の世界だった。北日本花火興業の型物花火の精巧さや技術力は、世界の最高峰といえよう。この花火もその集大成だった。北日本が得意とする型物花火のオンパレード。「ミッキー」「ドラネコ」「ピンクのネコ」「カザグルマ」「アフロ」「サングラス」などなど、見事に夜空に描き、その成功率は八十%を超えている。まさに神業だった。そして、北日本ならではの構成、展開力は、世界の花火関係者を唸らした。

 

◆4/29 Heaven’s Glory(茨城県 山﨑煙火製造所)

山﨑煙火製造所は、クリアな多重芯花火を目指す会社で、完成度が高く、現在「五重芯三銃士」のひとりである。また、「夢の観覧車」などの自由創作玉も多く、技術力が高く、安定感がある。今回は、前半は「日本の美」を花火とフレーム演出で表現。後半は、多重芯大玉連発であり贅沢の極みであった。この演出においても「三重芯」「四重芯」「五重芯」といった通常の創作花火では絶対に見ることのできない展開。間と余韻をたっぷりと演出した構成力は、まさに「日本の花火」そのものだった。

 

◆4/29 クロスオーバー アート(長野県 紅屋青木煙火店)

内閣総理大臣賞の受賞花火師最後は、この人しかいない。日本の伝統花火を継承し、さらに最先端の技術を駆使した演出など革新的な挑戦をし続ける「花火界のトップランナー」紅屋青木煙火店。彼らの高き志は「日本の花火を“芸術”に昇華させること」という。まさにトリを飾る「クロスオーバー アート」は、青木ならではの最先端の演出だった。これほど哲学的で「花火の美学」を追求し続ける花火はあるのだろうか。そんな考えさせる「芸術」だった。