ピックアップアーティスト
2026年ハミングタイム夏号掲載
唯一無二の世界観を届け続けて55年
フォークの枠に収まらないマルチアーティスト
最近、平成生まれの若者の間で「昭和の名曲」が人気なのだという。もちろん、海外でのシティポップ再評価などの遠因もあろうが、その中でもとりわけ人気が高いのが、イルカの代表曲「なごり雪」だ。
♪汽車を待つ君の横で時計を気にしてる~卒業シーズンなど別れの春に必ず街で耳にする王道の国民ソングだ。昭和50年のヒット曲だから、上の世代は「地方から蒸気機関車に乗って上京する青春の一コマ」を思い浮かべる一方、平成の若者たちには「汽車」はあり得ないだろうが「心に残るゆらぎ」は上の世代と全く同じなのだという。
その後、同じく伊勢正三提供の「雨の物語」「海岸通り」とヒットを飛ばしたことから、多くの人が抱くイルカのイメージは、ズバリ「オーバーオールでギターを手に歌うフォーク少女」なのだが、コンサートではジャズのエッセンスが感じられるのは、花形テナーサックス奏者である父、保坂俊雄のバックボーンもあるからだろう。過去に何度も新潟県内各地でコンサートを開催したが、父のサポートの入ったステージは格別だった。
彼女は音楽業界的にジャンル分けすると「フォーク歌手」になるが、そのようなステレオタイプなレッテル貼りは相応しくない。自然との共生、生物多様性のテーマを世の中に発信する社会活動もライフワークとしている。
グッズなどで目にする温かいイラストや絵本「ちいさな空」シリーズは自身の作で入手困難な本となっている。後年のCMヒット曲「まあるいいのち」は彼女の世界観を如実に現している。
今年はデビュー55周年の節目の年。昨今はアコースティック編成が多かったが、久々のバンド編成となり絶対に見逃せないライブになりそうだ。
(小柳はじめ)
イルカプロフィール
東京生まれ。女子美術大学に在学中からフォークグループを結成、シュリークスを経て、74年ソロデビュー。翌75年『なごり雪』が大ヒットし、シンガーとしての地位を確立。80年には女性シンガーソングライター初の日本武道館公演を成功させる。2026年に55周年を迎えた現在も、毎年全国ツアーを続けている。ラジオパーソナリティを務めるニッポン放送「イルカのミュージックハーモニー」は1991年の放送開始から35年目に突入。
2004年、IUCN国際自然保護連合初代親善大使に就任し、22年からはIUCN日本委員会と共に活動を継続中。絵本・エッセイの執筆や、母校の女子美術大学で客員教授も務める。2012年からは「生物多様性」をテーマに着物のデザイン・手描き・染めを手掛けるなどさらに活動の幅を広げている。母親でもあるイルカは、これらの作品や活動を通じて「私達は皆、この地球という大きな生き物に住む細胞同志である」というメッセージを、世代を超えた沢山の人々へ伝え続けている。
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