花火特集2016

花火特集2016

待ちに待った花火シーズン到来!でも、今年は去年と違う視点で花火を深く楽しみたい。

そんなあなたにお届けする、花火がもっと好きになる特別企画!



<改めて花火を知る>特別企画・花火対談

職人魂宿る光の芸術

花火研究家:小西亨一郎

ハミングツアー社長:小柳はじめ

小柳:昨秋の「大曲花火秋の章」解説と花火鑑賞士試験の講義、3月の新作花火コレクションでは、実況解説、4月の「大曲花火春の章」でも進行&実況、そして5月には花火鑑賞士会のフォローアップセミナー講演と年がら年中「花火漬け」のようですね?

 

小西:お陰様で、大曲は「日本一の花火の街」から「世界の大曲」になるべく、花火を通して様々な活動を行っています。昨年10月にはフランスのボルドーで「第15回国際花火シンポジウム」が開催され、私も大仙市長、大曲商工会議所会頭らと出席してきました。その席上で、次回は来年4月に大曲での開催が決定しました!

 

小柳:それは凄いことですね!地方からアイデンティティが消えてしまっている中で、花火をテーマに世界から人が集まる…学会とは違いますが、「たかが花火」とは侮れません(笑)

 

小西:花火は、平和的火薬利用ですから、すべての人々を幸せにします。戦争地帯では、火薬は殺戮の道具ですし、光や音に怯える人々を不幸に陥れるとても怖い物です。地球規模で、花火が恒常的に鑑賞できることを願う気持ちがその根底にあります。

 

小柳:パリやベルギーでは無差別テロがあり、火薬によって多くの命が失われとても重い事実がありました。放浪の天才画家「山下清」が、長岡花火を観た時、「世界中の爆弾が花火に変わったら、きっとこの世から戦争はなくなる」と呟いたと言う逸話が残っています。

 

小西:日本は、花火が一年を通して打ち上がっており、どこでも鑑賞できる幸せで平和な国です。そしてこの国に住む花火師(花火作家)たちは、ここ百何十年かの間に、世界一精巧な花火を作り上げ、「日本の花火は、文句なしの世界一」と呼ばれています。日本の花火は、最も手間と時間をかけた「究極の光の芸術」と評価されています。

 

小柳:花火鑑賞士の試験で出題される「いい花火の条件」では、「パッと一斉に開き」「一斉に色が変わり」「一斉に消える」…でした。僅か10秒ほどの時間に、起承転結のドラマが隠れていたりする。本当に儚く美しい!これぞ日本の美意識ですね。

 

小西:花火は、一瞬で消え去る最高のファインアートです。しかし、すばらしい花火は、消えても永遠に心の中に刻まれていき、語り継がれていきます。この言葉には、哲学的ともいえる奥深さが存在します。

 

小柳:ところで、花火を見るのに理屈は要らないという意見がありますよね。感覚的に「わあキレイ」といった感嘆語的感性は、人間が持つ最も基本的なものですから、花火が好きな人々は、みんな「原点」としてこの感情を持っています。

 

小西:それはそれで尊重するとして、前向きに考えるともっと面白い物になります。中国で黒色火薬が発明されたのを起源とし、ヨーロッパを経て日本に根付いた花火は、「美しいもの」「繊細なもの」あるいは「精巧なもの」を好む日本の国民性にマッチして、世界一と自負するまでにその技術を向上させてきました。花火師(花火作家)たちは、現状に満足することなく、あくなき技術研究を重ねており、「芸術」たるにふさわしい花火の実現のため日夜研鑽を積んでいます。

 

小柳:当に「職人魂が脈々と息づいている」と言うことですね。

 

小西:花火師(花火作家)たちは、当然のことながら見る人を意識して花火を製作します。とすれば、作り手である花火師だけの努力だけでなく、観衆にも相応の努力が必要であり、そのバランスによって、花火が総合芸術としての価値を発揮するものと考えます。

 

小柳:芸術家と鑑賞者の真剣勝負の場が花火会場である!と言う事ですね。

 

小西:さらに花火の歴史、種類、構造、現象を知りえたら、より深く花火を文化や総合芸術と捉え鑑賞できるようになります。そうすれば、もっともっと花火の世界に引き込まれていくことでしょう。

 

小柳:多くの旅行会社は、ただ「お客様が沢山集まって見えれば良い」との感覚ですが、例え日本中の旅行会社を敵に回してでも、ハミングツアーは絶対にそうはしたくないですね。花火師の思いや努力をリスペクトしながら、これからも真剣勝負で花火を鑑賞します!

 

小西:花火の世界も究めれば、もっと違う花火が見えてくる。

 

小柳:今シーズンも宜しくサポートお願いいたします。


【小西亨一郎】

花火の街「大曲」生まれ。「花火研究」をライフワーク。日本ソムリエ協会秋田地区長。「大曲の花火ガイドブック」の企画・主筆。花火とワイン(日本酒含む)をこよなく愛する!