ピックアップアーティスト

2022年ハミングタイム冬号掲載

古内 東子

中毒性のある歌詞の世界観と

洗練されたAOR


デビュー30年を迎えた円熟味と新境地

CDセールス百万枚超が連発し、日本の音楽シーンがかつて無い活況を呈していた1990年代、「恋愛の神様・教祖」と称され、松任谷由実や竹内まりやに次ぐシンガーソングライターの逸材として独特の存在感を発揮していた古内東子。

彼女のデビューは1993年『はやくいそいで』。この年の売上№1はCHAGEand ASKA の『YAH YAH YAH』で240万枚。ベスト10にはB'z とZARDとWANDS がそれぞれ2曲ずつ、今ではとても信じられないが、どれもミリオンセラーでビーイング系の小気味好いメロディーや小室ファミリーのダンサブルなリズムが音楽シーンを席巻していた。

古内東子は女性の心の細かい描写がとても上手い。

バブルの残り香漂う高揚と期待、そして漠然とした不安、働く女性が当たり前となった社会変化の中で、もがき苦しむ同世代の女性たちが集まるコンサート会場は男子禁制のような雰囲気だった。

その後も結婚、子育ての間もライフワークとして小規模なライブを続け、2023年2月にはデビュー30周年を迎える。心地よいアルバムを発売し精力的にライブを行っている。

シックな雰囲気のライブハウスでは、お酒を飲みながらのダンディな男性客も目立つ一方、ホールコンサートは同世代女性が多く集う。

音楽のエッセンスは時代と共に変化しても昔も今も曲のテーマはズバリ「恋愛」。営業的に振り回されがちな音楽ビジネスの中で、ブレずに芯の通った作品らはシンガーソングライター原点を見るようだ。

満席となった7月の県民会館小ホールに続いて、来春4月には音楽文化会館でコンサートが決定した。『PeachMelba』がFM局のPowerPlay でヒットした思い入れの地新潟で31年目のスタートを迎える。

(小柳はじめ)


■ プロフィール

‘93 年にソニーレコードより「はやくいそいで」でデビュー。

‘96年、7 枚目のシングルとして発表した「誰より好きなのに」がスマッシュヒットを記録。

後に数多くのアーティストにカバーされる。その後「宝物」「大丈夫」など数々の名曲を世に送り出し、‘97 年リリースのアルバム『恋』はダブルプラチナに輝く大ヒットに。‘

98 年にリリースしたアルバム『魔法の手』はオリコンウィークリーチャート1 位を獲得した。2022 年2 月21日のデビュー30 周年を記念し、前作より約4 年ぶりとなるアルバム『体温、鼓動』をリリース。

これまで19 枚のオリジナルアルバムを発表している。