ピックアップアーティスト
2025年ハミングタイム夏号掲載
土と向かい合い人々の営みを歌に込める
「いのち」と「平和」の伝道師
昭和の学生運動と同じ時代を共にした昭和世代の方は、シンガーソングライター加藤登紀子さんと獄中結婚した故藤本敏夫さんの娘と言った方がピンと来ると思う。
学生運動を「遠い昔の歴史」と認識する平成世代には、「半農半Xの歌手」と紹介した方が腑に落ちるかも知れない。
今や農林水産省を筆頭に人口減少に悩む地方で推奨されている「半農半X」は、自らの生存に必要な食料を小さな農業で賄い、残りの半分の時間で様々な収入を得る、今注目のライフスタイルだ。
農業生産を収入源、いわば「生活の糧」としてでは無く、自分らしく生きるための「基盤」として捉え、コロナ禍でテレワークが普及した今「半農半サラリーマン」として都心のオフィスに勤務する事は当たり前。自らの「好き」や「得意」を生かし「半
農半デザイナー」や「半農半プログラマー」「半農半民宿」など様々な若者が活躍するようになった。
私がそんなシンガーYaeに会ったのは2019年の秋。心地よく響くナチュラルな歌声に、宇宙で漂っているかのようなリラックスメロディー。民俗楽器や打楽器による地球の鼓動や大地の声を代弁するかのようなリズムで、小さなライブとしては非常に完成度の高い公演だった。
ライブ後の打ち上げで見た、真っ黒に日焼けしたその逞しい(失礼?)腕から、大地との共生を実践している事が、今もはっきりと思い出される。
映画「風と共に去りぬ」のメインテーマ「タラに帰ろう♪」では、土地が有れば生きていける!と・・・。上杉家は江戸時代に米沢への移封で藩財政は困窮したが「半農半士」で明治維新まで脈々と家を存続することが出来た。
戦後80年のいまこそ、平和の恵み、そして土と共に暮らすYaeのメッセージに耳を傾けては如何だろう。
(小柳はじめ)
Yaeプロフィール 半農半歌手/シンガーソングライター
故藤本敏夫・歌手加藤登紀子の次女。2001 年に歌手デビュー。
NHK みんなのうたや人気ゲームソフト「ファイナルファンタジークリスタルクロニクル」の主題歌などを歌唱。世界平和音楽祭や国内外での音楽祭を主催または積極的に参加。家族5人とともに自然豊かな里山「鴨川自然王国」で、農を取り入れた農的暮らしを営む。
環境省「つなげよう・支えよう 森里川海プロジェクト」アンバサダー。
ラジオなどのパーソナリティーを務めながらライブを中心に全国で活躍中。2020年にアルバム「On The Border」そして2023年9枚目のアルバム「80億の祈り」を発表。加藤登紀子がカバーした。2024年ラジオ深夜便のうた「HOME」を歌唱。この8月には平和への願いを込めて、新曲「いのちの灯(ひ)」が待望のリリース。
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