ユネスコ食文化創造都市 認定10周年記念 No.2
一般社団法人DEGAM鶴岡ツーリズムビューロー
中 野 律
春号では日本古来の四季の移ろいや自然の美しさを楽しむ文化があるなかで、ユネスコ食文化創造都市鶴岡の「食」について触れました。新潟の皆様からは私たちがおすすめする春の食を美しい景色とともに楽しんでいただきありがとうございます。
夏号では鶴岡の食に関わる「人々」についての紹介です。
和食展に立寄ってくださったお客様の中には、会場で〝食文化を紡ぐ人々〟という冊子をお持ち帰りくださった方もいるかと思います。鶴岡の食文化は長い歴史の中で他地域から持ち込まれたものが、日々の暮らしのなかで人々によって鶴岡独自の食文化となり、より豊かに、より深く発展してきました。鶴岡の食文化物語は、先人の知恵や技術、思いを継承しながら時代に合った価値を創造し、人々の手によって続いているのです。
鶴岡の「人」を育む教育の根源にある一つは、庄内藩酒井家が創設した東北で唯一現存する藩校「致道館」です。多くの藩校では、教育の柱を幕府が正学と認めたこともあり、自然や万物に上下関係・尊卑があるように、人間社会にも同じように上下関係や、差別があって然るべきという考え方の朱子学を教育としていたなか、致道館では教育目的を「国家の御用に立つ人物」、「人情に達し特務を知る人物」の育成にあると定め、一人ひとりの生まれつきの個性に応じてその才能を伸ばすことを基本にしなが
ら、知識を詰め込むことではなく、自ら考え学ぶ意識を高めることを重んじた教育が行われ向学の気風が培われました。この気風は、学問や芸術、産業活動を活発にし、稲の品種改良など人々のより良いくらしの実現に情熱を傾けた多くの先人を輩出しました。なかでも明治維新後に旧藩士が従事した松ヶ岡開墾事業は国も動かした偉大な事業です。
鶴岡が食文化部門に加盟しているユネスコ創造都市ネットワークは、文化の多様性の保護と世界の持続可能な発展に貢献することが大きな目的です。鶴岡ではユネスコ食文化創造都市に認定されたことで、何気ない暮らしにある価値への気づきから世界が広がり十年目を迎えました。
この夏の旅行は鶴岡の食文化をはじめとした文化を紡ぐ人々が感じられる物語性のあるものです。鶴岡での〝食べものがたり〟が皆様の暮らしに少しでも豊かな変化をもたらすきっかけとなることでしょう。
<協力>鶴岡市 企画部食文化創造都市推進課
一般社団法人 DEGAM鶴岡ツーリズムビューロー