ピックアップアーティスト

2025年ハミングタイム秋号掲載

佐藤 竹善

誰もが認める稀代のボーカリスト

音楽を超越した守備範囲に圧倒


 私が佐藤竹善を知ったのは、昭和の伝説的CM「I Feel Coke 」での、どこまでも伸びやかで1ミリの濁りの無い爽やかな歌唱。コカ・コーラ=飲んではいけない的ジュース?のイメージが「カッコいい!」に一瞬で上書きされたのを鮮烈に記憶している。

 昨年、そのCM曲が37年の時を経て「ビックマック」とのコラボで流れてきたのは正直びっくりした。映像は今のファッションにアップデートされてはいたが、バブル期独特の空気感が一蹴で蘇ったのだから歌の力はとても大きい。その後、様々な歌い手が担当したが、今でもメロディーが流れると反射神経的に竹善と思い浮かべるのだから、そのインパクトは余りに大きかった。

 その後、青森の幼なじみバンドSINGLIKE TALKINGとしてメジャーデビューすると「S p i r i t O fLove」のヒットで多くの人が知ることとなるが、彼のビックアーティストからの信頼は厚く、小田和正、山下達郎のツアーでのコーラスに招聘されるなど着実にキャリアを積み上げていく。

 私が新潟県内で彼のステージを初めて企画したのはコロナ禍中だったが、先の見えない暗黒のような社会の中で「永く続けていこう」と思える、素晴らしく伝説的なライブだった。

 天性の賜と言っていい声に加え、曲の背景やメッセージさえも自らのカラーに塗り替えてしまう理解力に裏付けられた表現力、さらにライブでは聴衆一人一人の心に「ストンと落ちるよう」まるで語りかけ寄り添うようなパフォーマンスには毎回脱帽する。

 1979年発表のオフコース「生まれ来る子供達のために」は憧れの存在であり師匠でもある小田和正プロデュースで2002年に発表したカバーシングルだが、その生歌唱は圧巻の一語に尽きる。

 その後、毎年のようにピアノの名手、宮本貴奈と県内各地で公演を行ってきたが、貴奈アレンジの「Just the Two of Us」や津軽弁バージョン「What a Wonderful World」などの、ポップスやジャズ、映画音楽などの名曲たちが竹善風に料理されたフルコースは間違いなく至福の時を提供する事だろう。

 そして今秋、塩谷哲(しおのやさとる)と30年前に結成したユニットSALT &

SUGARが県内初公演を迎える。敏腕音楽プロデューサーとして名を馳せる塩谷と

のライブは今から期待度MAXだ。

(小柳はじめ)


佐藤 竹善プロフィール

シンガーソングライター、キーボーディスト、音楽プロデューサー。

1988 年、SING LIKE TALKING のメンバーとしてデビュー。

そのノン・ジャンル、ノン・カテゴリーの高品質な音楽は5 枚目のアルバム「HUMANITY」以降すべてのアルバムをオリコンのTOP20 に送りこみつづけ高い評価を得ている。

バンドとしての活動と平行して、1995 年に発表したアルバム「CORNERSTONES」から本格的にソロ活動開始。

その卓越したボーカルとコンポーサーとしての才能は他を圧倒するものがある。

小田和正との共同ユニットPLUS ONE と塩谷哲とのユニットSALT&SUGAR のボーカルでもある。

他アーティストへの楽曲提供やプロデュースなども活発に行い活動の場を広げている。