ピックアップアーティスト

2022年ハミングタイム秋号掲載

村松 崇継

強烈なインパクトが脳裏に残るメロディー

誰もが耳にする多くの劇伴音楽を提供する気鋭の作曲家


♪この星にさよならをする時が来るけれど

~命は継がれてゆく~

ここ10年ほど小中学校の卒業式や結婚式などでよく歌われる曲がある。

産み育ててくれた家族や周囲の全ての人たち、故郷や出会いへの感謝を幅広い世代で共感できる、普遍的な歌詞が美しいメロディーで奏でられる平成の名曲「いのちの歌」だ。

「いのちの歌」は2008年下半期のNHK連続テレビ小説「だんだん」の劇中歌で、タイトルは出雲弁で「感謝」の意味。

ヒロインの「茉奈佳奈」の音楽ユニット「シジミジル」のオリジナル曲として、出雲や宍道湖の情景から「縁(えにし)の糸」をイメージした曲に、出雲出身の竹内まりやが「感謝の心」を綴った。

ドラマ放送後に大きな話題となり、東日本大震災では被災者らの中で心の拠り所として歌われたという。

二年前の紅白歌合戦で、特別出演した竹内まりやの歌唱で初めて耳にした方もいるかも知れないが、語りかけるような優しいピアノの旋律は、映画、人気ドラマで印象的なシーンに欠かせない劇伴音楽を数多く手掛ける、気鋭の作曲家でピアニストである村松崇継の代表曲だ。

一度耳にすると一瞬で口ずさめるインパクのあるメロディーラインは、身を委ねると映像の中に没入できるリアリティがある。

今秋、滅多に開催されない貴重なコンサートが新潟で開催される。

生のピアノでどうしても聴いてみたい公演だ。

 

(小柳はじめ)


■ プロフィール

1978 年生まれ、静岡県浜松市出身。5 歳からピアノを始め、オリジナルピアノソロアルバム「窓」でデビュー。

国立音楽大学作曲学科在学中に角川映画『狗神』を担当したことを皮切りに、これまでに70 を超える映画、TV ドラマ、舞台、ミュージカル等の音楽を手掛ける。

映画『64- ロクヨン- 前編』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』では日本アカデミー賞優秀音楽賞を2 年連続で受賞。

その活動は多岐に渡り、2019 年NHK 紅白歌合戦で竹内まりやが披露した『いのちの歌』をはじめ、NHK 土曜ドラマ『氷壁』、TBS 日曜劇場『天国と地獄~サイコな二人~』主題歌『ただいま』の大ヒット、『ラストチャンス 再生請負人』ではシンガーソングライターとして歌唱も担当した。

他に主な作品では、NHK 連続テレビ小説『天花』『だんだん』、映画『思い出のマーニー』『メアリと魔女の花』『夜明け告げるルーのうた』、TV ドラマ『桜の塔』『70 才、初めて産みましたセブンティウイザン。』、映画『漁港の肉子ちゃん』『護られなかった者たちへ』の劇伴など多数担当。

最近では映画『牛首村』や『とんび』の音楽担当のほか、数々のクラシックの名作や歌唱曲の編曲、CM 曲提供なども担当。

映画『護られなかった者たちへ』では、自身3 回目となる日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した。